血液検査結果の読み方2
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血液化学検査
総タンパク
血液中に含まれるタンパク質の総量で、アルブミン、グロブリン(抗体)、その他の微量な蛋白から成っています。肝臓、腎臓の機能や栄養状態を示します。
- 高値:脱水、炎症、特定の腫瘍
- 低値:肝疾患、腎疾患
アルブミン
血液中のタンパク質の中で多く含まれる成分のひとつ。主に体を構成する材料として使用され、肝臓で産生されます。
- 高値:脱水
- 低値:肝疾患、腸疾患、腎疾患、出血、火傷
グロブリン
血液中のタンパク質の中で多く含まれる成分のひとつで、主に免疫に関与する成分です。
- 高値:慢性炎症(猫伝染性腹膜炎など)、腫瘍(多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫など)
- 低値:肝疾患、腸疾患、腎疾患、若齢
血糖値
血液中のブドウ糖を示し、脳や筋肉のエネルギー源となります。糖尿病の診断の他、肝機能や栄養状態の指標となります。
- 高値:糖尿病、膵炎、ホルモン分泌異常、ストレス、過度の興奮
- 低値:肝疾患、腫瘍(インスリノーマ)、消化器疾患、飢餓、若齢性
尿素窒素(BUN)
血液中に含まれる尿素の量で、タンパク質の代謝による老廃物です。腎臓から速やかに排泄される物質であるため、血液中の数値が高いことは、腎臓の機能が低下していることを意味します。
- 高値:脱水、腎臓病、尿道閉塞、心疾患、ショック、高蛋白の食事
- 低値:肝不全、多尿、食欲不振、低蛋白の食事
クレアチニン
筋肉でアミノ酸が代謝されたあとの老廃物です。腎臓で速やかにろ過されて尿中に排泄されるため、腎機能の指標となります。また筋肉量の多い動物ほど数値は高くなる傾向があります。
- 高値:腎臓病、筋肉量の多い動物
- 低値:筋肉量の減少
GPT(ALT)
肝臓、筋肉、腎臓などに存在し、これらの臓器の疾患の指標となります。特に肝臓に多く含まれているため、肝細胞の破壊(障害)が進むと値が異常に上昇します。
- 高値:肝疾患(肝炎、肝癌、肝硬変など)、胆汁うっ滞
- 低値:特になし
GOT(AST)
肝臓、筋肉、腎臓などに広く存在し、これらの臓器の疾患の指標となります。GPTと異なり臓器による差はあまりないので、GPTと組み合わせて診断に使用されます。
- 高値:肝疾患(肝炎、肝癌、肝硬変など)、胆汁うっ滞
- 低値:特になし
ALP(アルカリホスファターゼ)
肝臓や骨、小腸などに多く含まれ、これらの臓器の疾患の指標となります。また犬ではステロイド使用時には高値を示す特徴があります。
- 高値:肝胆道系疾患、骨疾患(骨腫瘍など)、ホルモン分泌異常、腎疾患、骨の発育を伴う成長期、薬物(犬でのステロイド使用)
- 低値:特になし
総ビリルビン
血液に含まれている黄色い色素で、これが体内に蓄積すると黄疸となります。肝臓で処理され胆汁(消化液)として排出されるため、肝臓や胆管系の異常により高値となります。
- 高値:肝胆道系疾患、自己免疫疾患(溶血性貧血)、消化管出血、毒物
- 低値:特になし
リパーゼ(V-LIP)
膵臓から分泌される脂肪を分解する消化酵素で、膵炎などの膵疾患で上昇します。当院で測定しているV-LIPは獣医領域では最も信頼性の高い測定方法であると言われています。
- 高値:膵臓疾患(急性膵炎、慢性膵炎、膵腫瘍など)
- 低値:特になし
コレステロール
血液中に含まれる脂質の一種で肝臓で作られます。ホルモンや細胞をつくる材料として使われますが、増えすぎると動脈硬化などにつながります。HDLコレステロール(いわゆる善玉)とLDLコレステロール(いわゆる悪玉)に分けられます。
- 高値:糖尿病、ホルモン分泌異常、腎疾患、肝疾患
- 低値:ホルモン分泌異常、肝機能障害
中性脂肪(TG)
糖質,炭水化物,脂質などを材料に,肝臓でつくられる貯蔵用のエネルギー源です。余剰のエネルギーは中性脂肪の形となり,皮下脂肪として蓄積されます。血液中の中性脂肪が増えすぎると急性膵炎や眼疾患(角膜の混濁),発作を発症する一因になります。
- 高値:糖尿病,ホルモン分泌異常,膵炎,腎疾患,肝疾患
- 低値:ホルモン分泌異常,肝硬変
カルシウム
骨の主要成分で、筋肉の収縮や血液の凝固にも重要な役割を果たすミネラルです。高値では筋力低下、異常石灰化、尿結石,低値では,しびれ、痙攣、不整脈などが引き起こされる可能性があります。
- 高値:ビタミンD過剰、ホルモン分泌異常、悪性腫瘍
- 低値:ビタミンD欠乏、腎不全、ホルモン分泌異常、消化吸収不良、腎疾患
リン
細胞内の主要なミネラルで、カルシウムと共に骨を形成し、エネルギー代謝において不可欠な物質です。腎機能の低下により血液中に過剰蓄積することがあります。
- 高値:腎不全、ホルモン分泌異常、骨疾患、成長期
- 低値:摂取不足、ホルモン分泌異常
ナトリウム
体内の必須ミネラルで、神経や筋肉の働きに関わっています。
- 高値:下痢、嘔吐、腎疾患、多尿
- 低値:ホルモン分泌異常、腎疾患
カリウム
体を構成する主要なミネラルで、水分バランスの調整や神経の働きに関与します。高値や低値では心機能の低下(不整脈),筋肉の衰弱,嘔吐などを引き起こします
- 高値:腎疾患、ホルモン分泌異常、特定の薬物、細胞壊死
- 低値:慢性的な腎疾患、特定の薬物、嘔吐や下痢、食欲不振
血液検査で測定した検査項目について簡単にまとめたものです。検査結果と合わせて見ていただき,現状を正しく理解していただければと思います。また,異常値であるからといって病気であるとは限りません。他の検査の結果や現在の状況をふまえ総合的に判断することが必要ですので,ご不明な点がございましたら当院にご相談ください。